2005年 05月 25日
「外伝」第六十四話 「回想」
破壊を目的とする砲撃、爆撃は文字どおり目的物に中れば爆発して破壊します。
小銃の類は突き刺さるか突き抜けます。ところが迫撃砲は、瞬発信管が着いていて、
なにかに触るとそこで破裂するようになっています。
つまりジャングルなどでは上空で破裂し、しかも弾丸が不規則に砕けるため、
その破壊力は甚大です。
ギザギザした破片が、うなりをたてて飛んできて目的物を抉り取ります。
従って、人間にあたれば惨憺たるものです。
大隊砲小隊長の友澤少尉がこれにやられたのです。
大隊本部まで運ばれて来た時は、まさに血だるまで顔もぐしゃぐしゃの状態でした。
戦車は、戦闘中は貼覗孔(テンシコウ)という巾5ミリくらいの穴から
外を見ながら行動します。貼覗孔の内側には巾3センチぐらいの風防が貼ってあり
眼の被害を防ぎます。従って戦車が天蓋を閉めたら誘導してくれる兵がいなければ
思うように行動出来ません。狭い穴から「こん随歩兵」の誘導で動くのです。
開けた所なら楽でしょうが、ジャングルの中での戦車の行動は
容易ではなかったでしょう。
そこを見抜いて先ず、こん随歩兵をやっつけたのです。
彼らは戦車を頼りにしていましたから我が方の突然の発砲に驚きふためきして
戦車を置いて後退し始めました。
めくら同様になった戦車が右往左往し始めたのを見抜いて飛び乗り、
手りゅう弾をぶち込んだのです。(前述)
戦車は鉄の固まりですが、ジャングル戦では案外厄介ものだったでしょう。
私の友人で陸士出の戦車長がいました。
彼は運悪敵の弾丸が真正面から覘視孔に命中して戦死しました。
(中国戦での犠牲者でした)
戦車隊の犠牲者には眼をやられての戦死が多いと聞きます。
マーカス岬は当時は、相当深い椰子林で下草には潅木が生い茂っていました。
たまたま双方から斥候が派遣されたことがあり椰子林の中で鉢合わせを
したこともありました。(これは酒井中隊長からの後日談です)
ヘリコプターを当時はオートジャイロといっていました。当時日本では見たこともありません。
マーカス岬の戦場では米軍は偵察用に使っていたのです。(戦陣の断章にも記載)
ジャングルの上空でブルブル音をたてて止まっており、急転回して帰って行くのは
飛行機では考えられないことです。そのあとにドカドカと砲撃してくるのですから、
偵察用に使っていたのです。ヘリは、ジャングルでもなければ、
あんな使い方は出来ないでしょう。舐められたものです。
by Switch-Blade
| 2005-05-25 16:28
| 第六十一話~第七十話