「外伝」第六十三話 「予備隊を率いて行け!!」

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{マーカス岬の戦闘での一齣}
地上からと空からと徹底的に叩かれ・・暫くして一期後輩の友澤大隊砲小隊長が血だらけに
なって担架で運ばれてきた。(既報)
第一線将兵の生き残りが三々五々大隊本部のあたりにもやってきた。皆気ばんでいる。
大隊長は次の敵の行動を察知して興奮していた。自慢の髭を撫でている暇などない。
鉛筆をなめなめ自ら次の命令を「通信紙」上に走らせていた。(本来は副官の仕事だが)
正副副官も大隊長の顔色を伺いながら次の行動に対処していた。
空には敵のヘリコプター(当時はオートジャイロと言っていた。まだ実物は見たこともない。)が
ブルブルと飛んでいる。ジャングルが深いため姿は見えない。
敵の陣地あたりがざわざわしている。

大隊長からは先ず

「第一線将兵を纏めさせろ!!蔵岡副官!!」

「はい!!」

直ちに蔵岡中尉副官は、伝令を集めて各中隊長にその旨を伝えた。
敵陣地からのざわつきが次第に大きく聞こえてくる。私も胸騒ぎが高くなってきた。
血だらけの負傷兵が次々と野戦病院(形だけではあるが)に運び込まれてくる。
戸伏大隊長の声が次第に荒々しくなり、ぼやぼやしていると大声で怒鳴り散らされる。
しかし・・さすがである。一同てきぱきと自分の分野をこなしているのだ。

ヘリの爆音が消えた。

わが陣地の位置を察知されたか。

と 思うや敵陣の方からカタカタと戦車らしい音。

「畜生!!いよいよ来やがったなー」と大隊長の声。

綺麗に吹っ飛んでしまったジャングルの彼方に戦車の姿が見えた。行動は緩慢ではあるが・・。

「塚本少尉!!」

「ハイ!!」

「予備隊を率いて行け!!」

「ハイ!!」 もう無我夢中である。

戦闘には猶予はない。大忙しで当番兵も使って、本部周辺にいる予備隊の下士官、
兵を集め度胸を決めて出立した。

 
「目下外伝で「マーカス岬の戦闘」が連載中ですが、外伝中に出てくる人物ほかの逸話を・・・
予備小隊(私が小隊長役)の分隊長「野々村春水軍曹」は、バタ-ン攻略戦で活躍し、
個人感状を貰い二階級特進した人とあります。
つまり当時は上等兵だったのです。彼は勇敢な高知県出身者でした。
戦車に飛び乗った兵は中平登志夫上等兵(のち伍長)と言いやはり高知県出身でした。
彼はすばっしこい男で椰子の樹にもするする登る特技があったため
斥候に適しており各所で役にったものです。椰子には獰猛な蟻がいるので
現地人も嫌がります。
高知人はよく「土佐ツポ」と言われ、坂本龍馬に見られるように「どしょっぽね」のある人物が
多いと聞きますが、当時この二人を見ていて「さもあらん」と思ったものです。
二人とも在郷の時は漁師だったそうです。今では両氏とも故人になりました。
そして「明神 一軍曹」。彼は中平登志夫の分隊長でした。
中平氏ともども、ペアで勇敢な行動をとっており戦闘中は私の右腕でした。
私の連隊には広島、四国、九州の出身者が大部分でしたが、
高知3人の武勇は特に光っていましたね。
「功績調査」というものを作成しますが、功績「殊勲甲」の中には高知県出身者が
何人かいました。私もこの三人のお蔭で大いに助かりました。 
明神氏は既に90歳ぐらいになるでしょうが、毎年たどたどしい文字ですが年賀状をくれます。
歳上でも軍隊では部下でしたが、戦友会でもそんな素振りは見せませんでした。
素晴らしい人物です。 
今でも高知弁を聴くと彼らを思い出します。」

<最後の2行に「例によって気狂いじみた砲撃によってこれを援護した」とある。
我々からは想像もつかない砲撃なのだろう by Switch-Blade>
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by Switch-Blade | 2005-05-20 15:10 | 第六十一話~第七十話 | Trackback | Comments(0)