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「外伝」第五十四話 「戸伏大隊の逆上陸」

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 師団命令を受領した松田支隊長は、この命令に基づき直ちに主力方面から一個大隊をマーカス岬へ逆上陸させる決心をした。検討の結果起用部隊はブッシング所在の歩兵第百四十一聯隊第一大隊を逆上陸部隊に充てる事にした。十六日午後には聯隊長にその旨を命令、師団司令部に逆上陸決行の件を報告した。

南東方面艦隊は方面軍に松田支隊が十六日夜同作戦を実行する旨報告が届いたので、友軍攻撃を避けるため、航空攻撃の制限を処置した。

十六日午後、逆上陸の命令を受けた歩兵第百四十一聯隊第一大隊は早速呼集を実施して人員を集め出発を準備した。しかし、急なことで大隊の全力は集結できずに集まった人員だけで出発することにし、午後十時頃舟艇への搭載を開始した。

 戸伏大隊の対する逆上陸の命令はまったくの突然で、事前の準備は何も無かった!ともかく出来上がった編成での出陣である

 月明の海上をマーカスへ
 地図の無いリーフの錯綜する海上を、以前航海した経験があるという船舶工兵の小隊長を頼りにして航行したのであるが、途中すれ違うリーフの影を敵艦と見分けがつかずマーカスの進入は、無防備に等しい大発の艇隊にとっては極めて危険であると思われた。大隊長は敵艦艇の群がる狭い海域への突入は自殺行為と判断、更に西方の海岸に上陸し爾後陸路を経てマーカス岬に進出する決心を採った。
 十八日払暁オモイ付近に上陸(マーカスから直線距離で約6キロ)詳細な地図も無く砲声と方角を頼りにマーカスへ。この際オモイ付近で敵武装舟艇2隻を撃沈する。

米海兵隊公刊史によると、2隻に乗船した19人の斥候がイトニ河方面に偵察に行き、同日同時刻部隊を搭載した日本軍舟艇7隻にペイポ岬付近で奇襲され2隻とも破壊されたとある。

 松田支隊長は、この上陸について、マーカスから離れているために再度上陸のやり直しを命じたとあるが、片山聯隊長の戦後の回想によれば再度舟艇を出したかどうかは定かではないとのことだ。戦陣の断章著者も再上陸はなかったと書いている。
 オモイ付近に上陸した戸伏大隊はマングローブ湿地の中を前進しては水の深みにはまり引き返し、また別の方向に前進しては引き返しを繰り返しながら前進していった。
マーカス岬に対する反撃はニューブリテン島での初戦であり、ダンピール海峡防衛戦の一段階を画するもので各方面から注目されていたので、焦りは隠せなかったとのことだ。



※ 参考文献 引用
・戦史叢書 南太平洋陸軍作戦4
・「戦陣の断章」(出版物)および同著者作成小冊子「マーカス岬の戦闘」
by Switch-Blade | 2005-03-17 15:52 | 第五十一話~第六十話

対戦車手段不十分な場合の防御戦闘

by Switch-Blade
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